最悪な恋人がした宇宙誕生の話だけは暖かかった 桐生典子「金色の雨がふる」「千のプライド」
金色の雨がふる | |
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*内容*普段は日常の下に隠されている、心の底の不安と恐怖・悪意…。東京と足尾、現代と明治の時代を舞台に、ふた組の男女の運命的な出会いを通して描く、後悔から願いへの物語。
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桐生典子の小説では一番よかった。明治の炭鉱の廓、輪廻転生、宇宙の始まり、鉱石など素材が好きなものだったからかな。小説の流れも先が気になって気になって夜更かししてまで読んでしまった。悲恋に終わった明治の恋人同士がなんとか最後に成仏できてよかった。涙がほろり。
それにしても、あの恋人を救済しながらつきあってゆくのは大変そうだ。明人の澄んだ部分が入り込んで、ましな人間になってるのだろうか;でもその最悪な恋人がアヤさんに明人の最後の気持ちを伝えてやって、成仏させられたんだからよしとするか(笑)それからいつものことだけど、性描写が濃厚。官能小説じゃないんだから、もう少しさらりと流してくれるとありがたいなあ。せっかく繊細なお話が半減してって残念です。そういうのが読みたい時は、ただの官能小説を読めばいいんだからさ~(笑)
会話やエピソードのひとつひとつの符号が重なりあってゆく様が心に落ちてきて素敵だった。鉱石の好きな、となりの男の子の存在が愛しい。レヴューにもあったけれど、輪廻転生であろうと許せない最悪な恋人がその男の子に話した宇宙誕生の話だけは暖かかった。海を作るために「千年ふりそそいだ雨」。そして男の子の好きな黄鉄鉱。そして銅山で採れる黄銅鉱。どちらも金色。そして最後にふりそそぐ優しい雨も金色。
あちこちにちりばめられた言葉がいつも心をくすぐる。男の子とプールに行った時に水にはいってはしゃぐ40すぎの主人公。楽しくて心から笑いがあふれてくる「光のような感情」って私もずいぶん忘れてる気がする。「なんのために生きてるのかな」という僕に「宇宙の塵くらいにはなれることがちょっと嬉しい」と言う。寂しい子供時代を生きてる隣の男の子。そして最悪な男に成長してしまった恋人も、幽霊として出てきた廓のアヤさんも、主人公もみんなみんな寂しい子供時代を送ってきてる。孤独で意味がない自分の存在も、マグマから出来た鉱石と同じような物質で出来てると思うと安心するのかも。「孤独の量が同じ者どうしが惹かれあう」という言葉も心に残った。
★★★★☆
千のプライド | |
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*内容*弁護士見習いの可南子は、自殺した男と関係のあった女たちを調査するという奇妙な依頼を受ける。彼を一番愛した女は誰なのか? プライドという名のもとに女たちの愛と虚栄を描き出す連作長編。
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「金色の雨がふる」の少し前に読んだ本。相変わらず先が気になる素敵な展開でさくさく読めます。どんでん返しあり!さぞや魅力のある男だったのだろう自殺した中年男性の素敵さを意外な形で確認することになります(笑)
苦しい想いもたくさんするのに、どうして人は誰かに恋してしまうのだろう。「恋」というのは「魂乞い」とも言うそうです。自分の魂を差し出し、相手の魂をもらう。そしてその魂には鬼がつく。なんだか恋って怖いですね…
★★★☆☆
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